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小城簡易裁判所 昭和49年(ハ)26号 判決 1975年2月04日

原告 山田永吉

被告 国

訴訟代理人 境吉彦 本村博彦 ほか二名

主文

原告の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、別紙目録表示の家屋が原告の所有であることを確認する。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

本案前の答弁

1  原告の訴を却下する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

本案に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  別紙目録表示の家屋は、元福岡市中市小路一一番地に本店を有する訴外山口鉱山株式会社の所有であり、原告は右会社に雇用されていた間昭和三三年一一月ごろより社宅としてこれに居住していたが、その後原告は、昭和三五年八月二六日付をもつて右会社より解雇されたが、右会社は、その退職金一五万三、〇〇〇円を原告に支払おうとしなかつた。

2  右会社は、清算時原告に対し前記退職金支払にかえ前記建物を代物弁済として給付したので原告は、これを所有の意思をもつて平穏且つ公然に占有今日に至つている。

3  本件家屋は、未登記であるので原告は、前記会社に対し、所有権確認訴訟を提起すべきものであるところ、前記会社は、昭和三八年一〇月三一日清算結了登記をし、その法人格を喪失したので前記家屋は、民法第二三九条第二項により国の所有と推定されるに至つたので原告は、被告国に対し時効により前記家屋の所有権取得の理由をもつて請求の趣旨記載のとおりの確認を求める。

二  被告の本案前の抗弁

原告は、訴外山口鉱山株式会社(以下山口鉱山という。)から多久市東多久町大字別府三、三二四番の二木造瓦葺平屋建居宅二四平方メートルの家屋を訴外山口鉱山を退職する際退職金の代りに給付されたが、未登記のままであつたところ、訴外山口鉱山が昭和三八年一〇月三一日清算結了登記をして法人格を喪失したので、本件家屋は民法第二三九条第二項により被告の所有と推定されるに至つたので、原告は被告に対し時効により本件家屋の所有権を取得しているので、本件家屋の所有権の確認を求めているが、本件家屋が未登記であるとすれば、昭和三八年一〇月三一日清算結了登記している訴外山口鉱山はいまだ清算を結了しておらず法人格を有しているため、本件家屋について民法第二三九条第二項の適用はなく、原告の所有権の存否を確認するまでもなく被告は本件家屋の所有権を有しないのであるから被告を相手に所有権を確認する利益はなく不適法なものとして却下さるべきである。

三  被告の本案に対する答弁

請求原因事実中

1  第1項について、本件家屋が訴外山口鉱山の所有であつたことは認めるが、その余は不知。ただし、本件家屋の床面積は二四坪である。

2  第2項について、前段については不知後段については争う。

3  第3項について、訴外山口鉱山が昭和三八年一〇月三一日付をもつて清算結了登記をしたことは認めるが、その余の事実は争う。

四  本案前の抗弁に対する認否

被告の抗弁については争う。

理由

(本案前の判断)

訴外山口鉱山株式会社が昭和三八年一〇月三一日清算結了登記をしたことは当事者間に争いがない。

原告は「別紙目録表示の家屋は、元福岡市中市小路一一番地に本店を有する訴外山口鉱山株式会社の所有であり、原告は右会社に雇用されていた間昭和三三年一一月ごろより社宅としてこれに居住していたが、その後原告は、昭和三五年八月二六日付をもつて右会社より解雇されたが、右会社は、その退職金一五万三、〇〇〇円を原告に支払おうとしなかつた。右会社は、清算時原告に対し前記退職金支払にかえ前記建物を代物弁済として給付したので原告は、これを所有の意思をもつて平穏且つ公然に占有今日に至つている。本件家屋は、未登記であるので原告は、前記会社に対し、所有権確認訴訟を提起すべきものであるところ、前記会社は、昭和三八年一〇月三一日清算結了登記をし、その法人格を喪失したので前記家屋は、民法第二三九条第二項により国の所有と推定されるに至つたので原告は、被告国に対し時効により前記家屋の所有権取得の理由をもつて請求の趣旨記載のとおり確認を求める。」旨主張している。

右原告の主張によれば、原告が本件家屋について代物弁済として給付を受けたとか時効による取得をしたとかの主張がある。そうするとこの主張は本件家屋が無主物になつたので国の所有と推定されるに至つたという主張と明らかに矛盾する。また本件家屋は元訴外山口鉱山株式会社の所有であり、未登記であるので原告は右会社に対し、所有権確認訴訟を提起すべきものであるところ右会社は昭和三八年一〇月三一日清算結了登記をしその法人格を喪失したので本件家屋は民法第二三九条第二項により国の所有と推定されるに至つたと、原告は主張しているが右原告の主張は、右会社の右清算結了登記時後も右会社財産(本件家屋)が残存しているか未了の清算事務があることを前提とする主張であることは明らかである。そうすると右会社は消滅したものということができなく、なお権利能力を有し、当事者能力を有することに帰するので本件家屋について民法第二三九条第二項を適用する余地は全く考えられない。以上の次第であるので原告の所有権の存在を確認するまでもなく、被告は本件家屋の所有権を有しないし、被告も本件家屋の所有権を有しないと主張しているのであるから被告を相手に所有権を確認する利益はないといわねばならない。

したがつて、原告の本件家屋所有権確認の訴は、その余の点について判断するまでもなく、不適法として却下を免れない。よつて訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 大塚保雄)

目録<省略>

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